久野 淳(くのじゅん)
歯科医師・歯学博士・食事療法&栄養療法研究家。特に食習慣を見直すことを柱として、日々の診療に栄養療法を導入し、食生活指導を実践している。診療以外にも複数の医療系専門学校で講師を務め、基礎から臨床医学、食育や栄養学に至るまで幅広く教鞭をとっている
牡蠣に含まれる栄養素としては、良質なタンパク質。それに何といっても「亜鉛」です!亜鉛は鉄と同じく、人が健康を維持して生きるためには無くてはならないミネラルです。亜鉛は300種類以上の酵素の働きを助ける因子として知られていて、その効果はカラダのいたるところに及びます。
主な働きとしては皮膚や骨を丈夫に保ったり、免疫反応に関わってアレルギーを抑制したり、ビタミンAの抗酸化作用を促し過酸化脂質の発生を抑えることで、アンチエイジング効果を発揮します。またタンパク質と同時に摂取することで皮膚や髪の新陳代謝が速いペースで行われるため、女性には嬉しい「美肌&美髪効果」につながります!
その他にも成長ホルモン産生に関与して成長を促したり、味覚・視覚・嗅覚を正常に保ったり、生殖機能の改善に関与したり、更にはインスリンの構成成分として同合成に関与して糖尿病を防ぐ効果まであるのです
厚生労働省が定める日本人の食事摂取基準によると、1日あたり亜鉛の推奨摂取量は、成人男性で約10mg、成人女性で約8mgとなっています。亜鉛が多く含まれる食材には、動物性タンパク質を多く含む肉類(レバーなどの内蔵を含む)や魚介類、大豆や全粒粉などがありますが、牡蠣に含まれる亜鉛が他のどの食材よりも圧倒的に多く、100gで1日推奨摂取量を上回る13.2mgも含まれています(第2位の豚レバーは6.9mg)。また亜鉛の吸収率に関しては摂取した量の約30%前後と、同じミネラルである鉄と比べても吸収率は良い方ですが、亜鉛自体が水に溶け出しやすい性質があるため加熱調理する際には短時間で加熱し、煮たり茹でたりし過ぎないように気をつけましょう。鉄と同様にビタミンCを含む食材(レモンなど)と同時に摂取することで、吸収率を良くすることが期待できます
また牡蠣には他の貝類と同様に「ビタミンB12」も非常に多く含まれています。ビタミンB12の効果としては、同じビタミンB群の仲間である葉酸と共に赤血球の形成を助け、他にも神経細胞の核酸やタンパク質を合成、修復します。このビタミンB12に関しても水溶性であり熱にも弱いので、調理する際はできるだけ加熱し過ぎないようにしたいです。
亜鉛と同様に「食べるサプリメント」として栄養価の高い動物のレバー(肝臓)は今日では生食ができなくなり加熱調理する必要がありますが、この加熱によりタンパク質と鉄や亜鉛などのミネラルが結合して、独特の風味(匂い)が出ます。この風味が好きな人はさらに美味しいものと感じるのですが、レバーが嫌いな人はこの加熱による風味が苦手な人がほとんどなのです。牡蠣についても同様のことが言えるため、豊富に含まれる亜鉛やビタミンB12などの恩恵を最大限に受けようとするなら。また今まで苦手だった牡蠣を克服しようとするならば、生食か、加熱し過ぎない調理方法を選択した方が良いということになります!
海水を大量に取り込んで海のミネラルを豊富に溜め込んでいる牡蠣だからこそ、生活排水で汚染されていない地域で育ったものを、よりシンプルな調理法でいただきたいですね!そういう観点からも、牡蠣を知り尽くし、安心して生食できる牡蠣を作る生産者を選んで購入するようにしてください。